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雑感・Valiant Hearts

2014/09/12 14:41 Category:ソフトレビュー
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形劇の面白さのひとつは、余白にあるという人がいた。
 人形の表情は、あまり大きく細かくはかわらない。だが笑う芝居をさせると、人形は笑ったように見え、泣く芝居をさせると、泣いているように見える。
 喜怒哀楽を表現するにはあまりに拙いシステムが、却って見る者にそれを補完させる。精緻に描ききる事ではなく、余白を残す事で表現できる物もあるらしい。

 精緻に描く事ではなく、独特なヴィジュアルでアプローチするゲームは多くあった。ゲームの面白さを明るい絵で加速させるものや、ゲームシステムそのものを絵にゆだねるものなど様々だ。
 本作はどうだろう?線が少なく奥への動きが少ない、切り絵調のアニメーションで描かれるのは、第一次世界大戦の片隅で流れたある物語。余白が伺えるヴィジュアルに、何が描かれるのか。

 1914年。サラエボで放たれた銃弾の硝煙が、ヨーロッパじゅうに立ち籠め始めた頃。
 フランス、サン=ミエルに住む酪農家エミール。仕事と信仰と愛娘に生活を捧げていただけの男が、突如として戦場に追いやられる。
 フランス外人部隊の門を叩くアメリカ人フレディ。彼の目的は、ドイツ軍への復讐。奪われたのは、生涯をかけて愛し守ると誓った女性だった。
 フランスを強制退去させられた青年カール。彼は生まれがドイツであったというだけで、愛する妻と生まれたばかりの子供のいる酪農園を去り、その国と戦わねばならなかった。
 戦火のパリに飛び込む女性アンナ。ベルギー貴族の娘でありながら、戦災に苦しむ人を助けるため、そしてドイツ軍に捕われた父を捜すため、銃弾の飛び交う中を走る。
 一匹の軍用犬。ただ命令に忠実にあるだけの彼の存在が、この小さな物語を紡ぐ糸となる。
 人間が産み落としたこの世の地獄で、ただ必死に生きようとする人々。彼らに血の泥を掻き分け、鉄の崖をよじ登らせるのは、その身に宿ったちっぽけなValiant Hearts(勇敢な心)だった……。

 ゲームの基本は横スクロールのアクションパズル。ステージ上のオブジェクトを、操作したり除けたりしながら進んで行く。
 途中犬に指示を出したり、操作キャラを切り替えるなどをして進むのが肝の一つで、上手に頭を使わせてくれる。
 シンプルな2D調のヴィジュアルも相俟って、ターゲットとなるオブジェクトを見逃す事も少なく、オブジェクトへの指示出しがカーソルではなく、ワンボタンでできるのも、テンポよくプレイできる工夫だろう。
 2D調だからといって、表現が貧相かといえば決してそんな事はない。動きこそ紙人形のような、横軸を中心としたものだが、その表現力はセルアニメのそれにも劣らない。
 むしろレールのように一本道を進むかのような動きが、否応なくそこで展開される物語に、プレイヤーを集中させてしまうのだ。
 故に、そこで紡がれる物語はあまりにも切なく重い。好む好まざるによらず、強制的に戦火に晒される男と、命を預け合った戦友、家族のいる国と戦う青年、戦争に加担させられる父を捜す女。彼らの行く道は、夥しい火薬と死体で埋め尽くされる。
 彼らを繋ぐように有る犬でさえ、軍用犬として育成されたもの。忠実に戦いに加担する様が、時に愛くるしく、時に遣る瀬ない。
 あまりに切ないドラマがを見たプレイヤーは、デザインの余白、動きの余白を、無意識に埋め立ててしまうのだ。
 戦争ものは歴史に疎くて苦手、という方もご安心を。要所要所に挟まるTIPSで、目の前で繰り広げられる戦いの背景と、意外と知らない戦争の側面を教えてくれる。

 ゲームの進化が生んだ映像の多様化。それを正しく組み入れた、名作である。
 ゆったり時間を取って、短編小説でも読む気持ちで臨んでほしい。
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