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書評・白暮のクロニクル(1)

2014/01/31 13:17 Category:日記、雑記
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SF、といえば、言わずもがなサイエンスフィクションの略である。が、あるいは漫画ファンにとっては、藤子・F・不二雄が語った「すこし・ふしぎ」の略というほうが、馴染みがあるだろうか。
 この「すこし」というのは、あとにかかるふしぎの「程度」を指しているように見るのが、自然な日本語解釈だろう。しかし氏の代表作「ドラえもん」を見ると、その解釈に些か疑問がある。
 ドラえもんのひみつ道具は、時を越え空間を無視し、空を容易く飛び回り二次元を実体化させる。今の技術を以ってしても到底成し得ない、とんでもないふしぎなものだらけだ。
 ではドラえもんは「すこし・ふしぎ」ではないのか?
 私は「すこし」とは、作中におけるふしぎの「量」ではないかと思うのだ。
 ドラえもんの舞台は、何の変哲もない現代日本の住宅地。もしあの世界からドラえもんがいないまま物語が進んだら、何の変哲もない日常が繰り返されるだけだろう。
 そこにドラえもんという「ふしぎ」が一つだけ投入される。のび太のトラブルを解決するために出されるひみつ道具と、その副作用に懲らしめられるのび太。たった一匹(?)のネコ型ロボットが、ある時は些細な事件を、ある時は大冒険を演出する。
 もしその舞台が、ドラえもんの持つ不思議以上の不思議で構成された世界では、ドラえもんは宝の持ち腐れになるだろう。SFにおいて「ふしぎは・すこしでいい」という教訓が見え隠れしているように思えるのだ。

 ゆうきまさみがいなかったら、今の私はいない。
 その理由と委細は本筋とは無関係なので割愛するが、私にとってゆうきまさみとはそういう漫画家である。
 私は氏を(ご本人は違和感を覚えられると思うが)SF漫画家だと思っている。
『究極超人あ~る』『機動警察パトレイバー』『パンゲアの娘KUNIE』『鉄腕バーディー』。私がパトレイバーの次に好きな『じゃじゃ馬グルーミン・UP!』では鳴りを潜めたものの、その作品群には、日常の水面に一滴の「ふしぎ」を落とし、その波紋をつらつらと描いたものが多い。
 バーディーでは、ふしぎの分量がかなり多くなっていたが、本作におけるふしぎは一点『オキナガ』の存在である。

 平成27年。厚生労働省から渋谷保健所へ新人研修に来ていた伏木あかりは、集団食中毒の発生源と目される店を調査中、その店主の惨殺死体を発見してしまう。
 警察が大挙する現場に、やや遅れて現れた厚労省参事の竹之内が、現場の刑事にぽつりと告げる。
「被害者は『オキナガ』です」
 伏木は事情が飲み込めぬまま、なぜか研修を中断させられ、厚労省夜間衛生管理課なるセクションへ配属された。
 伏木は配属初日、殺人図書館と呼ばれる私文庫で、少女のような顔立ちの少年に出会う。
 雪村魁。彼もまた『オキナガ』であった。
 だがその直後、雪村はそこを訪れた少女に斬殺される……。

 本書の帯文で作者自らが「新境地」と語るように、今までのゆうきまさみとは少し趣が違う。物語の主体はアクションでも競馬でもなく、ミステリーである。
 あまり書くと楽しみを奪ってしまいそうなのだが、謎の見せ方が実にさり気なくて面白い。
 オキナガという「殺し方に手順がいる種」と「なぜ一般的には知られていない殺し方を加害者が知っていたか」という謎。十二年周期で現れる「未年の殺人者」と、70年に渡る連続殺人同一犯説。そしてそれらを繋ぐ『オキナガ』とは何者か……。
 まだまだこれからの物語故、その行く先は見えないが、週刊連載らしい後の引き方が実に心地よい。
 新境地といえば、ヒロインが実にヒロインらしくないのも面白い。
 元よりショートヘアと眉毛に並々ならぬこだわりを持つ作者であり(私見)、今回もそのこだわりは遺憾なく発揮されている。が、いわゆる「コミック的な可愛い女子キャラ」とは違い、どこかにいそうな女性公務員として描かれ、お嬢さんというよりおっかさん的な気性もあり、色気は極めて抑えられ、しかしながら「かわいげ」はしかと持っている。
 男性青年誌の主人公として配するにあたっての配慮か、あるいは少女的でどこか子供っぽい雪村との対象を狙ってか、何にせよこれからが楽しみなヒロインだ。

 すこしだけふしぎな『オキナガ』と、すこしだけふしぎが存在する日常。
 ゆうきまさみらしい白の多い画面で描かれた、新たなクロニクル(年代記)を飾るに相応しい傑作SFミステリーが、始まっている。
 

 全くの余談だが、本作の主人公伏木(ふせぎ)は、女性ながら身長178センチという「でかいふしぎ」である。お後がよろしいようで。
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