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表現と人道の十字路

2013/12/21 21:11 Category:ニュース
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時中の事である。表現規制が当然のように横行していた時代、ある劇の台本が官憲のチェックを受けた。
 主人公の青年が言う台詞。
「奥さん、どうか一度だけ、接吻させて下さい!」
 公の場で接吻などと卑猥な言葉はけしからんと、接吻の二文字が墨で塗りつぶされた。
 修正された台本で稽古が始まった。青年役の俳優が、その部分で言葉に詰まった。
「これは言えません……」
 笑い話のような話だが実話であるらしい。規制規制と遮二無二墨を走らせていては、思わぬ副産物を産み落としかねない。

 日本赤十字社が公式HPに掲載した『戦争のリアリティーを追求したゲームに関するQ&A』という文が話題になっている。昨今の規制論調に乗って、暴力表現を減らせとでも唱えるのかと思えばさにあらず。実際の戦争と向き合うことも多い赤十字社らしいものであった。

 事の発端は昨年、国際赤十字(ICRC)・赤新月社が「ビデオゲーム内での国際人道法違反に対する役割と責任」を国際会議のサイドイベントで議論し、この中で「約6億人のゲーマーがバーチャル世界で国際人道法に違反している可能性がある」という議論があったという。
 これに関しICRCは、ゲーマーが国際人道法に違反する可能性を一切否定し、この話し合い自体が非公式であったため、何らかの決議や取り決めもなかったとコメントした。
 今回のQ&Aの掲載は、こうした動きに対する回答という意味もあったのだろう。

 Q&Aの中身を要約すると、
>問題の対象としているのは「戦争のリアリティを追求したビデオゲーム」であり、SFや歴史モノといったジャンルは対象ではない。
>ICRCはゲーム内における「暴力表現」について議論したいのではなく、シナリオの中で国際人道法が軽視されることを心配している。
>能動的なメディアであるからこそ、そうした動きに注視し、またリアリティを追及したゲームであるからこそ、人道法を遵守または違反した結果も反映されるべきだ。
 およそこの三点である。
 つまり、ゲーム内で非人道的行為を描くのであれば、それを行った人物が賞賛されるような描写をするのではなく、それが招く代償も明確に描くべきである、というわけだ。臭いものに蓋をしたがる規制論調とは、一線を画す主張だ。

 確かに、現代戦をモチーフにしたゲームにおいて、プレイヤーキャラはテロリストや弾圧政権に対する側である場合が多い。プレイヤー自身が人道法に反した報いとなって、敵を倒すという図式である。
 また非戦闘員に対する発砲に関しても、そもそもそういった人員が登場しないゲームがあったり、どうしても出すときは発砲できないようにしたり、残虐行為に走らせない工夫や、そうなってしまった際の結果まできちんと描いている。
 記憶に新しいところでは『コールオブデューティ・モダンウォーフェア2』で、テロリストグループに潜入した米軍人になったプレイヤーが、空港での無差別虐殺に加担するパート。日本版では民間人へ発砲するとゲームオーバーとなる仕様だったが、オリジナル版は自由に撃てたという。
 その結果(?)プレイヤーキャラは裏切られ、そのテロリスト達も報いを受ける。当然といえば当然のストーリーだが、テロリズムを賛美するものではないという明確な意思が伝わる。

 無論この論調を歓迎できない……否、しづらい人もいるだろう。何を以って人道法が軽視されたと受け取るかという、概念の線引きが永遠に出来ない以上、その解釈次第ではひっかかるゲームがどんどん出てくるからだ。
 改めて書くまでもないが、ICRCはゲーム開発会社に対し何ら法的執行力はなく、アドバイスや協力はできても、指示命令を下すことは出来ない。Q&Aの文中にも『ビデオゲームの開発者が、武力紛争法(国際人道法)の要素を正しくゲームに取り入れられるよう、私たちは開発を手助けしています』とある。
 引っかかったところで実行動が取れない以上は、あくまで協調や目標でしかない。だが他ならぬ赤十字社の方針とあらば、世間やユーザーの耳目を集めるのは必定である。

 線で消すのではなく、正しい線を示そうというICRCの方針。その考えには敬意を表すが、思わぬ副産物を産み落とさぬよう、内外の目がいる。
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