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客の勝ち負け

2012/05/11 18:42 Category:業界
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めてこの話をさせてもらう。長年ご愛読頂いている方には目垢がついた話だろうが、こうした話題にはやはりこの話が一番しっくり来るのだ。

 作家の永六輔が学生時代、親交のあった陶芸家の河井寛次郎と共に、京都清水の坂を散歩していたときのこと。永青年がとある道具屋の店先に置かれた、小さな蕎麦猪口に目を留めた。
「ほう、いいねそれ」
 視線の先に気付いた河井氏も褒める。名のある陶芸家に審美眼を見立てられれば、そりゃあ得意になるもの。
「いいでしょうこれ?」
「いくらだろうね?」
「僕は一万円でも買いますね」
 本当は千円くらいだと踏んでいたが、得意になった気分も手伝って大きく出た。
「そうか、じゃ買ってきなさい。ここで待ってるから」
 言われた永青年は店に入る。
「ごめんください、あそこにある蕎麦猪口はおいくらですか?」
「へぇ、五百円になります」
 それは安いと喜び、永青年はすぐ買って戻る。
「買って来ました先生」
「いくらだったね?」
「五百円でした」
「そりゃあやすいね」
 二人はそう言って歩き出す。と、すぐさま河井氏が足を止めた。
「まさか君、それで五百円払って来たんじゃないだろうね?」
「ええ、払いました」
「なぜ一万円払わない?」
 永青年はわけがわからない。
「だって、五百円ですから…」
「君は一万円だと言ったじゃないか」
「でもお店は…」
「そういうことじゃない。君がその蕎麦猪口に一万円をつけたなら、なぜそれを通さない?自分の言葉に責任も持つべきだ。一万円払ってくるまで君とは口をきかん」
 敬愛する氏に臍を曲げられてはかなわないと、永青年は道具屋に戻る。
「すみません、さっきの蕎麦猪口なんですが」
「はいなんでしょう?」
「一万円で買わせてください」
「…はい?」
「いや、ですからあと9500円で」
「あ、おつりがご入用で?」
「違うんですあの、この一万円で…」
「えー、あ、じゃあこちらもお付けしまして」
「いりませんいりません!」
 と、コントのような悶着の後、押し付けるように一万円を払って戻ってきた。
「…払ってきました」
 不服そうな永青年。対する河井氏は満足げな顔をしている。
「うんうん。それでいいんだ。君がそれに一万円もの値をつけたという事は、君がそれに負けたという事だ。負けた相手には礼を尽くさなきゃいけないよ」
 値段は売り手がつけて当然という時代になって久しい現代。河井が語った買い物における買い手と売り手の関係性は、どこか新鮮である。

 近年雨後の筍のように頻出し、破竹の勢いで急成長を続けるソーシャルゲーム市場に、思わぬブレーキがかかりそうである。
 有料で引ける籤でアイテムを当て、それを複数集めてよりよいアイテムを獲得するシステム、いわゆる『コンプガチャ』に対し、消費者庁は景品表示法に定める「絵合わせ」に当たるものとし、対策を検討しているという(5月10日現在)
 ソーシャル市場の稼ぎ頭にして、その射幸性の高さが取り沙汰されてきたシステムだけに、市場全体への影響は未知数であろう。
 同様のサービスを展開する大手各社は、すでに今月一杯でコンプガチャを中止することを決めているという。
 消費者庁は「子供が月数十万円請求される事例もあり、一定の規制をしなければならない」としているが、私個人はどうしてもこの一連の経緯に、気持ちわるさを感じずにはいられない。

 極論かもしれないが、与えられる対価を明確にし、支払いの額と仕組みをきちんと理解し、それに対して支払う能力を有する限り、これを行うか否かは消費者の判断でしかないのではなかろうか。
 先述の河井氏の言を借りれば、消費者がコンプガチャに負けたのなら、礼は消費者が尽くせばいい。お上が出るべき場面は、そこに極端な公平性の欠如と、当初の契約の不履行があった場合程度にすべきではなかろうか。
 コンプガチャの仕組みそのものに違法性があるならそう言えばいい。多額の金銭を支払った人をさも『被害者』と呼ぶような風潮に、どうしても違和感を覚えずにいられないのだ。

 全くの気のせいかも知れないが、PL法が施行された辺りから、消費者の責任というものが過剰に軽視されている気がしてならない。
 製造物により発生した事故を、その製品の安全性の欠如と一絡げにし、責任を製造者に転嫁してしまっては、いつまで経っても賢い消費者など育ちようはなく、同様の事故が絶える事はあるまい。
 以前、鉛筆のキャップに小さな穴を空けているメーカーを見た。子供が誤飲した際、窒息しないよう空気穴を開けていると言っていた。
 さも素晴らしい工夫であるように取り上げられていたが、もし穴の開いていないキャップを誤飲して子供が窒息失した場合、その責任はメーカーが問われてしまうのかと思うと、心底ゾッとした。
 その前に絶対的になければならない要素。そうしたものを口に入れてはならないという、人間として至極当たり前の事を教育すべきだという考えが、すっぽり抜け落ちている気がしてならなかった。

 話を戻す。コンプガチャに違法性があるか否かは、司法が決めればよい。だがそうであったとして、買った人間は被害者であり一分の責任もないかといえば、そんなことはあり得ない。そうした仕組みと価格に負けたのだから。
 昨今難しいことかもしれないが、負けて礼を尽くす価値がある商品と価格であるかどうかを、見極められる消費者になればいいのだ。

 冒頭の話には続きがある。
 永青年は悔し紛れに河合氏に聞いた。
「じゃあこの蕎麦猪口が十万円だと言われたらどうすればいいんです?」
 河合氏はこともなげに答える。
「そうしたら一万円に負けてくれるまで、あそこに通って値切りなさい。君が決めた値段なんだから」
 値切れないのならどうするか。その先の選択が、あなたが賢い消費者であるか否かの分水嶺なのかも知れない。
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