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菜種油とiPad

2010/04/07 00:16 Category:技術、ハード
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戸の頃、京都清水寺の傍、音羽の滝の前にある茶屋で、仕事の合間に茶を飲んでいた菜種油売りの男が、何を思ったか茶屋の旦那を呼ぶ。
「おやっさぁん」
「なんじゃいな油屋さん?」
「わてそろそろ行くわ」
「せっかちやなぁ。もうちょっとゆっくりしてったらええんに」
「やや、こんな所で油売ってても商売にならんさかい。他所歩いて油売らな」
「はっはっは、どっちにしても油売るとは面白い商売やな」

 上方落語の傑作「はてなの茶碗」の触りの件である。
 今の若い人には、何のことかわからない人も多かろう。電気のない頃。家の明かりは行灯が主流で、その燃料に使われていたのが菜種油だった。
 油屋はそれを売り歩く商売で、天秤桶に油を入れて家々を歩き、各家庭に置いてある小さな油桶に移し変えて量り売りする商売だ。
 この菜種油は粘性が高くなかなか流れないため、移し変えにも時間がかかった。そのとき出来るちょっとした間を繕うため、油屋は家の奥方と世間話をするようになった。
 出かけた先でおしゃべりに花が咲き、なかなか帰って来ない人を指して「油売ってやがる」というようになった語源はここにある。

 いつも通り前置きが長くなったが、一旦この話は忘れてほしい。
 先日北米でiPadが発売された。タッチパネル入力に特化したタブレットPCである。
 iPadが注目される最大の要因といえば、電子書籍端末としての可能性からであろう。先行する電子書籍端末『キンドル』をどこまで追い上げ、そして抜きされるかが注目されている。
 日本ではまだ馴染み薄い電子書籍だが、アメリカでは国内線のシートベルトサインが消えると、乗客が一斉にキンドルを取り出すというほど普及している。
 これに対抗するiPadは、高精細なディスプレイと、音楽や動画も扱える利点。そして5万円を切る低価格で勝負する。

 Newyork Timesの記者が、iPadに対して面白い評価をしていた。
「iPadは何かを生産するためには足りないが、消費する端末としては全てを無限大に便利にしてくれる」
 コンピュータというものは、生まれた当初から生産するものであり続けてきた。ミサイルの弾道計算、工場の生産計画、出納表、文書、音楽、映像…。コンピュータはそれらをいかに生み出しやすくするかを基本に設計されてきた。
 しかしiPadは、言うなれば逆の発想で設計されている。否、生産されたものを効率よく扱う発想というべきだろうか。
 使用者の多様な発想や意志をコンピュータに伝える機器は排され、コンピュータに内包された被生産物を、美しくかつ効率的に表示し整理することに特化している。加えてオンラインでそれらの商品を売買するシステムも、当然整えられている。
 そう、これは消費者のツールであり、コンピュータが消費生活において特別な道具ではなくなったことを意味している。

「箱物」と呼ばれていた情報商品が、箱すら使わないオンラインで流通し、品切れや流通のコストが限りなくゼロになりつつある昨今。どこか寂寥感を覚えてしまうのは、ただの懐古趣味だと一笑に付すには早い気がする。
 商品が消費者に届くスピードが飛躍的に速くなったということは、その間にあったものが尽くカットされたということである。生産、流通、そして小売だ。

 消費者の顔を見て物を売れる小売店は、消費者が何を求め、何が気に入らないかをつぶさに観察できる。それは売り上げという数字のみならず、どんな人が誰と来て、どういう経緯で買っていくかまでを、理屈ではなく肌で感じることが出来る場所なのだ。
 それがなくなってしまうということを、生産者側はもっと危惧していいと思う。オンライン販売をやめろ、と言いたい訳ではない。消費者との距離を遠ざけない工夫をしろと言いたいのだ。
 モニタリングや販売数調査だけで、生きた消費者心理は汲み取れるのか?ものを買うのに店に行く必要さえなくなった時、それは副作用をもたらしはしないだろうか?

 電灯の登場と共に行灯は姿を消し、油を売る商売はなくなった。
 iPadの登場が垣間見せた消費形態の変化が、消費者と生産者が油を売る機会を奪ってしまったように思えてならないのだ。
 不景気やら過渡競争やらで、油売ってる暇はない。と言いたい生産者もいるだろう。しかしいいものを作るために油を売る必要がある。そんな商売もあるはずだ。
 少なくともゲームだけはそうであると、固く信じている。
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